通信需要は人の行動に依存するため,繁華街やターミナル駅では通信需要が高いが,人が減る夜間は通信需要が低くなります.局所的に通信需要が増加したエリアに対応するため,マクロセルに加えてスモールセルを重畳する技術が検討されています.しかしながら,需要の減る夜間における不稼働時間の増加や,電源やネットワークの敷設制限によるスモールセルの設置制限により,従来の手法では効果が限定的になります.そこで通信需要が変化する場所や時間に応じて一般車やバスが,自身が持つネットワークを一時的に貸し出す,クラウドソース移動式無線機(CRU)を提案しています.
通信キャリアが管理するライセンス帯よりもコストを低くすることができるアンライセンス帯無線は,異なる無線システムが自由に使用(共用)することができる一方で,通信品質が低いことが問題です.通信品質低下の主な原因は,自律分散制御で動作する自システム端末同士の自システム干渉と,同一周波数帯を共用する無線システムからの他システム干渉となります.次世代無線LANでは,擬似的な集中制御により自システム干渉を回避していますが,他システム干渉は考慮しておらず,制御下にない複数の干渉システムが混在する環境で品質が劣化します.そこで,干渉システムが送信する信号を観測し,使用状況や信号の特徴を抽出し,無線チャネルやリンク数といった無線リソースを制御する手法を提案しています.
無人航空機(UAV: Unmanned Aerial Vehicle)がインフラ設備点検や宅配等のサービスへ活用されるようになってきています.UAVを運用する際には,位置情報やバッテリ残量等情報を無線通信により常時通知する必要があります.UAVは空中に存在するため,地上間の通信と較べて電波の到達距離が長くなります.宅配サービスといった,市街地におけるUAVの運用を想定すると,到達距離が長くなることにより電波の被または与干渉が増加することが問題となります.そこで,UAVの持つアンテナの指向性と飛行経路によって変化する電波干渉を,実際の3Dモデルを用いたレイトレースシミュレーションにより評価し,予干渉を低減することができる指向性と飛行経路を提案しています.